【電源回路基礎】非絶縁降圧スイッチングレギュレータの設計手順①(パワーライン編)

みなさま、お疲れ様です。

本記事は非絶縁降圧スイッチングレギュレータの勉強をしてみよう。という記事の第3回目です。

↑この非絶縁降圧スイッチングレギュレータが本記事の対象です

前回記事でシミュレーションでとりあえず動かしてみました。

非絶縁降圧スイッチングレギュレータの回路図(LTspice)

とりあえず動き方はわかったけど、L1とC1はどうやって決めたらいいの?

という方向けに、各定数はどう設定したら良いか?を解説します。

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インダクタの設定方法

「インダクタのリップル電流ΔiLが出力電流の約30%になるようにLを設定する。」のが目安です。

リップル電流ΔiLはコイルの式(V=L*Δi/Δt)より以下の計算式で計算できます。

$$\small{
Δi_L=\frac{V_{in}-V_{out}}{L}t_{on}
}$$

Vin:入力電圧[V]
Vout:出力電圧[V]
L:インダクタンス値[H]
ton:ON時間[sec]

tonはDuty*Tpwmなので、代入します。

$$\small{
Δi_L=\frac{V_{in}-V_{out}}{L}Duty*T_{PWM}
}$$

Duty:ON Duty幅[%]
Tpwm:PWM周期[sec]

続いて、L=の形に変形すると

$$\small{
L=\frac{V_{in}-V_{out}}{Δi_L}Duty*T_{PWM}
}$$

となります。

ここでΔiL=0.3*出力電流としたらLが計算できますね。

ちなみになぜ30%か?

あくまで目安なので何とも言えませんが、リップル電流は以下のように特性に影響を与えます。

  • リップル電流が大きいと出力電圧のリップル電圧が大きくなる。
  • リップル電流が大きいと不連続モードに入りやすくなる。
  • リップル電流が小さいとピーク電流モード制御において安定制御しづらくなる。

不連続モードとはインダクタ電流が0Aの期間が存在する状態です。

連続モードと不連続モード

ピーク電流モード制御とは制御方法の1つです。リップル電流をフィードバックして制御します。リップル電流が小さすぎると安定しづらくなります。

大きすぎると良くないし、小さすぎると良くない。いい塩梅が30%くらいが目安。って感じです。

出力コンデンサ容量値の設定方法

「出力コンデンサ容量値は出力リップル電圧の要求値以下になるように設定」します。

出力リップル電圧は以下の計算式で計算できます。

$$\small{
V_{ripple}=(R_{ESR}+\frac{1}{8C_{out}f_{pwm}})ΔI_L
}$$

Vripple:出力リップル電圧[V]
RESR:コンデンサのESR[Ω]
Cout:出力コンデンサ容量値[F]
fpwm:スイッチング周波数[Hz]

Cout=の形に変形すると以下ですね。

$$\small{
C_{out}=\frac{ΔI_L}{8f_{pwm}(V_{ripple}-ΔI_LR_{ESR})}
}$$

コンデンサがESRの大きい電解コンデンサの場合、ほぼRESR*ΔILで出力リップル電圧が決まって、三角波形になります。

低ESRのセラミックコンデンサの場合、ほぼ1/8Cfで決まります。出力リップル電圧はスイッチング電圧波形から少し位相が遅れた正弦波になります。

実践

試しに以下の仕様でLとCを決定してみます。

項目
入力電圧[V]12
出力電圧[V]5
負荷電流[A]1
スイッチング周波数[kHz]100
出力リップル電圧[mV]10

L1の値を決定

先ほどの式に入れ込んでいきます。

$$\small{
L=\frac{V_{in}-V_{out}}{Δi_L}Duty*T_{PWM}
}$$

Duty=Vout/Vinなので5/12=41.67%です。Tpwm=1/fpwm=10usecです。

$$\small{
L=\frac{12-5}{0.3}0.4167*10u=97.2[uH]≒100[uH]
}$$

ということで、100uHに設定します。試しにリップル電流を計算しておきましょう。

$$\small{
Δi_L=\frac{12-5}{100u}0.4167*10u=0.29[A]
}$$

いい感じです。次に行きます。

C1の値を決定

先ほどの式に入れ込んでいきます。

$$\small{
C_{out}=\frac{ΔI_L}{8f_{pwm}(V_{ripple}-ΔI_LR_{ESR})}
}$$

セラミックコンデンサを想定して、ESRは数mΩですが、まぁ一旦10mΩで計算します。

$$\small{
C_{out}=\frac{0.29}{8*100k(10m-0.29*10m)}=51.06[uF]
}$$

存在する容量値で近い値だと68uFでしょうかね。これに設定します。

動作確認

回路に先ほどの計算値を入れ込んで

シミュレーション回路図(LTspice)

シミュレーションを回しました。

シミュレーション結果

いいですね。大体計算通りです。

こんな感じにインダクタとコンデンサを設定します。

本記事は以上です。誰かの参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!!