出力24V240Wのフォワードコンバータを設計したので詳細を解説

どうも。フォワードコンバータの設計をしてみました。その結果と設計の詳細内容を記事に書いていきます。

設計検討した結果をLTspiceでシミュレーションをして確認しています。

私が「設計をした」と言っている意味は「教科書的な動作の確認をした」ではなく、「実際にある部品で回路を構成して動作確認した」です。

(正確にはまだ理想回路のところはありますが、ご容赦ください。)

今回はある程度シミュレーションで動作するところまで確認が出来たので、その内容を記載します。

・フォワードコンバータの理論はわかった。実物だとどう回路を組めばいいの?

・要素ブロックの動作を知りたい。

という方の参考になれば幸いです。

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目標仕様

動作確認するときにコンセントに差して動くように以下の仕様にしました。

項目記号mintypmax単位備考
入力電圧Vin90140180VAC電源をDCに整流した後を想定
出力電圧Vout24V精度は今のところ不問
出力電流Iout510A最大240W
スイッチング周波数fsw100kHzばらつきは不問

出力電圧と出力電流とスイッチング周波数は深い検討はありません。とりあえず目標です。

何でコンセントに差したら90V~180Vでtypが140Vなん?という方は以下の記事を見てください。

設計結果

最終的に得られた結果(回路図とシミュレーション結果)をまず記載します。

回路図

回路図はこちら↓になります。

シミュレーション結果

シミュレーション条件

入力電圧=140V、出力負荷抵抗=24/10=2.4Ω、シミュレーション時間=20msec

波形は上から
V(vout):出力電圧
V(pwm):パワーMOSFETをON/OFFするPWM波形
V(vsw_1st):1次側のスイッチング電圧
V(slope):SLOPE(のこぎり波形)電圧
V(vc):誤差増幅器&フォトカプラの出力電圧

拡大波形

・SLOPE電圧とVC電圧が交差するまでパワーMOSFETがON、交差後にパワーMOSFETがOFFしている。

・出力電圧が目標の24Vに収束している。

と意図通りの動作をしており、問題ないと考えます。

ソフトスタート機能がないため、動作直後にオーバーシュートしていますが、そこはまぁいいじゃない。ってことで。

回路構成とその説明

全体

先ほど出しましたが、全体の回路図は以下になります。4つのブロックに分けました。

それぞれの回路の役割

回路ブロック役割
コンバータ回路入力PWM波形に応じて、フォワード方式で1次側の入力電圧を2次側に降圧して出力する。
フィードバック回路出力電圧と基準電圧との誤差を増幅し1次側回路に伝える。
これにより出力電圧が上がったら、出力電圧を下げるように
出力電圧が下がったら、出力電圧を上げるように制御がかかるようになる。
SLOPE波形生成回路のこぎり状のSLOPE波形を生成する。このSLOPEの周波数がスイッチング周波数になる。
PWM波形生成回路出力誤差とSLOPE波形から次の周期のDUTY比を決定し、パワーMOSFETにPWM波形を出力する。

以下で詳しく説明します。

コンバータ回路

フォワードコンバータをメイン回路部分になります。

動作は非絶縁の降圧スイッチングレギュレータと同じ動作をします。

M1がON:VLsに変圧器の巻き線比の電圧がかかりD2がONして出力に電流を流す。

M1がOFF:VLsに電圧かからなくなるがLout1が電流を継続して流そうとするのでD3がONして出力に電流を流す。

を繰り返して出力に電力を供給します。

「動作がイマイチわからん!」という方はコンバータ回路のみを抜き出して動作確認をしている記事がありますので、こちら↓もご確認ください。

巻き線比やインダクタンス値、コンデンサ容量値などの決め方も記事にしようと思います。。。

「変圧器がどんなもんか知らんわボケ!」という方。私もぶっちゃけよくわかりません。色々調べた記事もありますので、こちら↓もご確認ください。

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ぶっちゃけ、コアボビンはEIコア35が手に入れやすそうだな。ってところから出力電力を決めていきました。

誤差増幅器

出力電圧が目標値より上がったり、下がったりしたら増幅して制御回路にフィードバックする役割の回路です。

分圧抵抗と誤差増幅器(シャントレギュレータTL431)と絶縁のためにフォトカプラ(PC817)で構成されています。

これらの部品を選定した理由は「安い」&「手に入れやすい」&「色んな人が使っている記事がある」です。

それぞれ個別で動作確認をしたうえで全体回路に接続し動作を確認しています。

動作説明

TL431のREFに出力電圧の分圧を入力しているので、TL431はREFが内部基準電圧2.5Vになるように制御してくれます。(フィードバック制御)

R13、C4、C6は位相補償回路です。設定手順は以下です。

①出力電圧段のLCのポール周波数を以下式から計算する。

$$f_p=\frac{1}{2\pi{}\sqrt{LC}}=\frac{1}{2\pi{}\sqrt{150u*220u}}=876.1Hz$$

②R13&C4、R8&C6で構成されるゼロ点を①で計算したポール周波数にぶち当てるように値を設定する。

※R13=10kΩとして計算しました。

$$f_{z1}=\frac{1}{2\pi{}R_{13}C_4}$$

↓f_z1=fpとして

$$C_4=\frac{1}{2\pi{}R_{13}f_{z1}}=\frac{1}{2\pi{}10k*876}=18nF$$

$$f_{z2}=\frac{1}{2\pi{}R_{8}C_6}$$

↓f_z2=fpとして

$$C_6=\frac{1}{2\pi{}R_{8}f_{z2}}=\frac{1}{2\pi{}43k*876}=4nF$$

③その値を入れてシミュレーションしてみて、安定動作していたらOK。安定動作していなかったらちょっとゼロ点周波数を下げるように調整する。

安定しなかった↓ので、C4=40nF、C6=20nFにしました。

全体波形

拡大波形

VC電圧がユラユラ揺れてる。発振してる。

このコンバータは「電圧制御」をしています。理解するには古典制御の基礎知識が要りますが、

出力のLCで電圧の応答が遅くなる分、安定動作させるためにフィードバック回路も応答スピードを合わせてあげてる。みたいな理解でいいと思います。

PC817はTL431が引っ張る電流を絶縁して2次側に伝えています。

SLOPE回路

SLOPE回路ではノコギリ状の波形をスイッチング周波数で発生させる回路です。

NE555でスイッチング周波数での発振を行い、

コンデンサC2に定電流を流してチャージ➡ディスチャージを繰り返してノコギリ状の波形を実現しています。

この回路のみで回路シミュレーションをしておりますので、よかったら見てみてください。

PWMコンパレータ

PWMコンパレータはSLOPE波形とフォトカプラ出力を比較して次の周期のDUTY幅を決定します。

コンパレータにはLM393を使用しています。A1とE1が理想回路なので改善が必要です。

動作としては

コンパレータはSLOPEがフィードバック電圧を超えたらHighが出力されます。

その信号をRSフリップフロップのリセット端子に入力することで、SLOPEがフィードバック電圧を超えたらリセットされる。という波形を実現しています。

こちらもこの回路のみで回路シミュレーションしておりますので、よかったら見てみて下さい。

今後やっていくこと(できていないこと)

出来ていないのは以下です。

1次側の内部電源VCCが理想電源

RSフリップフロップが理想素子(PWMコンパレータ回路のA1)

パワーMOSFETを叩きにいくプリドライバーが理想素子(PWMコンパレータ回路のE1)

今後の課題です。はい。

参考文献

スイッチング電源の原理と設計

スイッチング電源制御設計の基礎