自作LLCコンバータの設計効率化 定数計算シートを作成したので使い方を説明

皆様、お疲れ様です。

LLCコンバータの設計に挑戦中のものです。

前回、前々回記事で定数設定してシミュレーションしてってやってきましたが、色々とおかしな挙動を見るたびに

「あれっ?この定数でいいんかいな?」

「もっかい定数計算しないといけんかしら?」

「え?もっかい関数電卓ぱちぱちするの?」

「あーーーーめんどくせぇーーーーーー」

となったので、定数計算を自動化しようと計算シートを作成しました。今回はその内容を説明したいと思います。

この記事の対象者

・定数設定したが解析すると定数を変更しないといけなくなった。

・定数計算を繰り返しするのが面倒くさい。

この記事でわかること

・LLCコンバータの定数計算シートの作り方

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計算シート

計算シートは以下よりダウンロードできます。よかったら使ってみてください。

計算シートの解説

シートを順番に説明していきます。

仕様を記入する

ここは白色セルに自分で値を入力していきます。

まぁそれ以上の説明はありません。

トランスの巻き線比の計算

仕様条件から”N_計算値”が自動的に計算されます。計算式は以下の通りです。

$$N=\frac{Vin_{max}}{2Vout}$$

“N_計算値”がキリの悪い数字だった場合を考えてN_決定値を自分で入力できるようにしています。

基本大きめにしといたらいいので、小数点第2以下を切り上げでいいと思います。

(それなら手打ちじゃなくてroundup関数使って自動化でよいのでは…?と書いてて思いました。)

ゲインGのピーク値の最小値を計算

Gainのピーク値の最小値を巻き線比Nを入力したら勝手に”Gp_計算値”に計算してくれます。計算式は以下の通りです。

$$Gain_{min}=\frac{2NVout}{Vin_{min}}$$

“Gp_決定値”は手打ちにしています。”Gp_計算値”でギリギリこれだけは必要を計算してマージンを乗っけて”Gp_決定値”とします。

今回は20%のマージンを乗っけてます。

Qの下限値の計算

Gpの最小値を出せるようなQ値の下限値を計算しています。

これは励磁インダクタンスLpと漏れインダクタンスLrの比毎に結果が変わるので、5パターンで計算しています。S=Lp/Lr、1/S=Lr/Lpです。

計算式が長いので色々分けて計算していますが、計算式は以下の通りです。

$$Q_{min}=\sqrt{\frac{(F-\frac{1}{F})^2}{\frac{1}{G_p^2}-(1+K(1-\frac{1}{F^2}))^2}}$$

$$K=\frac{2S+1}{S^2}、F=\frac{\sqrt{2S+1}}{S+1}$$

$$A=1+K(1-\frac{1}{F^2})$$

$$B=F-\frac{1}{F}$$

ここでは小数点第2位以下を切り上げてます。一貫性がないですね。

出力抵抗値を計算

出力電圧と出力電流から出力抵抗RLが計算されて、それを1次側に換算したRL’にしています。計算式は以下の通りです。

$$R_L’=\frac{8}{\pi^2}(\frac{n1}{n2})^2R_L$$

励磁インダクタンスと共振コンデンサの関係

励磁インダクタンスと共振コンデンサを決める準備です。共振コンデンサの計算式は以下の通りです。

$$C_r=\frac{1}{(2\pi{}f_r)^2*(\frac{1}{S}+\frac{1}{S+1})L_p}$$

別sheetの”定数計算シート_励磁インダクタンスとQの関係グラフ”に各Lp/Lr比のパターンで励磁インダクタンスを振った時の共振コンデンサ値を計算してグラフ化しています。

これを見てどのくらいの励磁インダクタンスにしたら容量値こんくらいかぁと感覚をつかみます。

励磁インダクタンスとQ値の関係

Q値は以下の計算式で計算できます。

$$Q=R_L’\sqrt{\frac{C_r}{L_s}}$$

$$L_s=(\frac{1}{S}+\frac{1}{S+1})L_p$$

これをまた各Lp/Lr比パターンで励磁インダクタンスを振ってグラフ化したものです。別sheetの”定数計算シート_励磁インダクタンスとQの関係グラフ”にデータがあります。

点線がQの下限値です。

同じLp/Lr比が重なった点から左側で励磁インダクタンスを選択すれば、Qはおのずと下限値以上を満たすことが出来ます。

ビジュアルで見ると分かりやすいなぁと勝手に思っています。

励磁インダクタンスと共振コンデンサ容量値を決める

Lr/Lpの比を選んで先ほどのQとLpのグラフからLpを選択して、自分で入力します。するとCrが先ほどの式で計算されます。それが”Cr_計算値”に出てきます。

“Cr_計算値”に近い値で存在する容量値に自分で設定してください。”Cr_決定値”に手打ちします。

するとあとは色んなパラメータが勝手に計算されます。

出力電圧と動作周波数の関係

最後にチェックのために自分の設定した定数で出力電圧VS動作周波数のグラフを計算してくれます。計算式は以下です。

$$Vout=\frac{1}{2}Vin\frac{1}{\sqrt{(1+K(1-\frac{1}{F^2}))^2+\frac{1}{Q^2}(F-\frac{1}{F})^2}}\frac{n2}{n1}$$

$$K=\frac{L_s}{L_p’}=\frac{L_r+\frac{L_pL_r}{L_p+L_r}}{L_p-\frac{L_pL_r}{L_p+L_r}}、F=\frac{f}{fr}、fr=\frac{1}{2\pi\sqrt{L_sC_r}}、Q=R_L’\sqrt{\frac{C_r}{L_s}}、R_L’=\frac{8}{\pi^2}(\frac{n1}{n2})^2R_L$$

入力電圧が最小値&最大値で計算してみて、点線の狙い値を共振周波数(今回は100kHz)以下で出すことが出来ているかをチェックしましょう。

これで定数設定は終了です。

まとめ

今回は仕様条件を入力したら定数を計算してくれるシートを作成しました。

これを使うと仕様条件を振った時に定数がどう変わっていくかが簡単に見れるのが良くないですか?

初めてやる回路で仕様を決めて、理論計算して一発でうまく行くわけないんですよ。

何回もやり直してようやくちょっと理解できるんですよ。

だから最初っから何回も繰り返し計算する前提で計算シートみたいのを作っていった方が後々楽できるんじゃないですかね?

どうなんでしょうね?

終わりです。今後は定数を固めていきたいですね。最後まで読んで頂きありがとうございました~。