パワー半導体を動かすときに冷却するのにヒートシンクが必要となります。とりあえず実験するのにヒートシンクってどう選んだら良いのか?の考え方を実例を挙げながら解説してみます。
- どうやってヒートシンク選べばいいかわからない。
そういう人に参考になれば幸いです。はい。
【結論】損失が許容できる熱抵抗のヒートシンクを選ぶ
最初に結論ですが、
損失(W)が許容できる熱抵抗(Rth)のヒートシンクを選ぶ。
が基本的な考え方となります。
もうちょい詳しく書くと、
例えば、「パワー半導体部でA[W]損失する。外気温度は最大でB[℃]です。パワー半導体のチップ温度最大値Tjmax=C[℃]」という条件であれば、
A[W]の損失が生じてもC-B[℃]の温度上昇しないような熱抵抗Rthのヒートシンクを選べばよい!
ということになります。
イメージを見ながら、計算方法を説明
よく見るイメージ図ですが、ヒートシンクを付けたときのパワー半導体のイメージ図を示します↓。
ヒートシンクの熱抵抗値は以下の計算式で計算できます。
$$\small{
Rth_{heatsink}=\frac{Tc_{max}-Ta_{max}}{P_{loss}}
}$$
Ta_max:周囲温度の最大値[℃]、Tc_max:チップ表面温度の最大値[℃]、Rth_heatsink:ヒートシンクの熱抵抗、Ploss:パワー半導体の損失[W]
- Tc_maxはまぁざっくり設定で良いと思いますが、Tj_maxとRth_jcはメーカーのデータシートに記載あります。そこから同じように計算したらOKです。
- Ta_maxは使用条件で決まりますね。
- Plossはざっくり効率がいくつでって計算する感じで概算は出来ますね。
これを計算して必要なヒートシンクの熱抵抗を求めたら、その値以下の熱抵抗を持つヒートシンクを選定したら、目標のTcmax(Tjmax)に至らないのでOK!という考え方です。
どんな感じで選定していくかを具体的に書いていく
実際に選定してみましょう。
損失を見積もる
仮に定格100Wで効率が95%くらいのコンバータを想定しましょう。その場合、損失は
$$\small{
\frac{P_{out}}{P_{in}}=0.95\
\frac{100}{P_{in}}=0.95\
P_{in}=\frac{100}{0.95}=105.3[W]\
P_{loss}=5.3[W]
}$$
損失は大体5.3Wと見積もれました。まぁこれが一つのパワー半導体で全て生じたと仮定しましょう。
(実際は他にも損失要素はあると思いますが、練習ということで。それに厳しい方向になるから、いいんじゃないでしょうか。)
必要な熱抵抗を計算する
仮に実験環境のTa_max=60℃、Tc_max=100℃としましょう。そのとき必要なヒートシンクの熱抵抗は
$$\small{
Rth_{heatsink}=\frac{Tc_{max}-Ta_{max}}{P_{loss}}\
Rth_{heatsink}=\frac{100-60}{5.3}=7.6
}$$
となります。つまり7.6[℃/W]以下のヒートシンクを選べばよいとなりますね。
ヒートシンクを選定する
今回は勝手にパワー半導体のパッケージをTO220の仮定して、RSコンポーネントで検索してみました。
TO220で熱抵抗を計算値より小さい物をいくつか選んで、安い順に並べ替えました。
仕様を見ると熱抵抗は6k/Wと条件以下です。まぁこれで良んじゃないですか?という感じで選定します。
(強制空冷の場合)ファンを選定する
強制空冷の場合、ファンも選定する必要があります。
その場合、以下の図のように風を送った時の熱抵抗を提示してくれているヒートシンクを選び、その風を送れるファンを選べばよいです。
国内メーカーだと三洋電気に山ほど種類があるので、必要な風速が得られるファンを条件決めて選んだら良いです↓。
参考資料は以下のTDKラムダの「パワーモジュール電源製品アプリケーションノート」のP11付近がとても参考になります。
以上です。誰かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。