「トランスって何?」という人向けにトランスの解説をしてみる

みなさま、お疲れ様です。

絶縁型の回路を扱うようになったときに最初のハードルは「トランス(変圧器)って何?」ではないでしょうか?

本記事では「トランス?最高にハイな状態のこと?」くらいの人に向けて

トランス?ってどういうものなのか?

について書いてみようと思います。

では始めます。

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まずトランスの実物を見てみる

教科書で出てくる回路記号↓で話をする前に実物を見てみましょう。

トランス(変圧器)の回路記号

実物はこんなのです↓。

EIコアのトランスです。

中身がどうなっているかを以下でダラダラ説明します。

まず電線を巻き付けるボビンがあります。

ボビン(EIコアを想定)。本来は黒いけど分かりやすいように白にしてます。

このボビンに電線を巻き付けます。

1次巻き線を巻き付けました。

回路記号の左側を巻いてます。

固定用と1次と2次の絶縁のためにテープを巻きます。

また巻き線を巻きます。

2次巻き線を巻きました。

回路記号の右側を巻いてます。

またテープを巻きます。

仕上げに黄色テープを巻きます。

電線の被覆をむいて、端子にはんだ付けします。

次にコアを取り付けます。EIコアはE字とI字に分かれているからEIコアです。

上下からがすっとはめます。

コアを取り付けたら、こんな感じです↓。

EとIの間になにか挟んでGAPを作ったりします。

仕上げにテープを巻いたら終わりです。

ボビンも黒に塗りました。

これがトランスです。見た目は以上です。次はこれがどう動くのか?について解説します。

トランスはどんな動きをするの?

1次側電圧を巻き線比分2次側へ伝達する

トランスの動作は

「1次側に電圧をかけたら巻き線数の比で2次側に電圧が出てくる。」

です。

式で書くと以下です。

$$\small{
V_2=\frac{n_2}{n_1}V_1
}$$

V1:1次側電圧[V]、V2:2次側電圧[V]、n1:1次側巻き線数、n2:2次側巻き線数

例えば、V1=100V,n1=2,n2=1だったらV2=50Vになるって感じです。

簡単ですね。

ではなぜこうなるのでしょうか?
それはファラデーの電磁誘導の法則によるものです。ちょっと嫌になりますね。

ファラデーの法則は以下式です。

$$\small{
V_1=n_1\frac{dΦ}{dt}\\
V_2=n_2\frac{dΦ}{dt}
}$$

Φ:磁束

磁束の変化量に巻き線を掛けたら、電圧になるって式ですね。

トランスを簡単な図で描くとこうです↓。

1次側にV1の電圧をかけると電流が流れて磁束が発生します↓。

この磁束はコアを介してn2を貫きます。

n1とn2に同じ量の磁束が貫かれるので、以下の式からdΦ/dtを消します。

$$\small{
V_1=n_1\frac{dΦ}{dt}\\
V_2=n_2\frac{dΦ}{dt}
}$$

すると以下の式が導出されます。

$$\small{
V_2=\frac{n_2}{n_1}V_1
}$$

こんな感じで1次側電圧が巻き線比に応じて2次側に伝達されます。

このときにトランス1次側に電流ieが流れます。これはコアに磁束を生じさせて、トランスに磁力を与えている電流です。この電流を励磁電流と言います。

2次側電流を引っ張ると1次側に巻き線比分の電流が流れる

電流の動きも巻き線比に応じて流れます。

$$\small{
i_1=\frac{n_2}{n_1}i_2
}$$

i1:1次側負荷電流[A]、i2:2次側負荷電流[A]

i2=1Aで、n1=2、n2=1ならi1=0.5Aとなります。

W2=50V*1A=50W、W1=100V*0.5A=50Wと電力が同じですね。

ではなぜこうなるのでしょうか?
それはホプキンソンの法則によるものです。だいぶ嫌になりますね。

ホプキンソンの法則は以下式です。

$$\small{
n_1i_1=Φ_1*R_m\\
n_2i_2=Φ_2*R_m
}$$

Rm:磁気抵抗

磁気抵抗はコアの形状や種類などで決まっている定数です。ここではコアで一定の値と捉えていたら大丈夫です。

まず先ほどのトランスに負荷を引っ張ったときを考えます。

i2が流れるため磁束が生じます↓。Φ2とします。

これがコアを介してn1を貫き、電圧を発生させて、電流i1を流します。

電流i1が生じるということは、この電流による磁束が生じます。これをΦ1とします。

これがΦ1とΦ2で逆向き磁束が生じ、最終的にΦ1=Φ2に落ち着き、お互いが打ち消します。なので最終的には励磁電流ieにより生じた磁束Φeのみが残ります。

は?なんで落ち着くの?って思うかもしれません。もしどちらかの磁束が大きかったら、その磁束分の電圧を生じさせて⇒電流流して⇒磁束を作ってと動いて結局、Φ1=Φ2に落ち着いていきます。

なので、さきほどのホプキンソンの法則の式でΦ1=Φ2として、結合することが出来ます。

$$\small{
n_1i_1=Φ_1*R_m\\
n_2i_2=Φ_2*R_m
}$$

したがって、以下の式が導出できます。

$$\small{
i_1=\frac{n_2}{n_1}i_2
}$$

はい、こんな感じトランスは動きます。

まとめ

まとめると

  • トランスはボビンに複数の電線巻いて、コアをつけたもの
  • 電圧を巻き線比に応じて伝達する。
  • 電流も巻き線比に応じて伝達する。

ですね。以上となります。

誰かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!

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良かったら読んでみて下さい。