SLOPE回路(ノコギリ波形発振回路)をタイマIC NE555とPNPトランジスタ2SA1015を使ってLTspiceでシミュレーションをする

どうも。本日はSLOPE回路をLTspiceでシミュレーションした結果を報告します。

手に入れやすいNE555と2SA1015で作成しました。

SLOPE回路は一定周波数でノコギリ状の波形で発振を続ける回路のことです。

DCDCコンバータではPWMコンパレータの入力として使われます。

メーカーのデータシートではよく「SLOPE」と一括りにブロック図に記載されています。

今回は以下の方の参考になれば幸いです。

・SLOPE回路をディスクリートでどう作ったらいいの?

・SLOPE回路の動作原理を知りたい。

準備➡SLOPE回路の作成➡SLOPE回路の動作解説

という順番で記事を書いていきますので、読みたい箇所に目次から飛んでください。

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[準備]2SA1015をLTspiceに追加する

NE555はデフォルトでLTspiceのライブラリに入っていますが、2SA1015は入っていません。

LTspiceへの追加手順を以下に示します。

手順

LTspiceでLTspiceXVII/Lib/cmpのstandard.bjtを開きます。

注意

standard.bjtファイルの編集はLTspiceの”開く”からの編集した方が無難です。

「メモ帳で編集してもOK。」と書いてあるサイトもありましたが、私はwordpadで編集したらstandard.bjtファイルがぶっ壊れました。

(もしstandard.bjtがぶっ壊れた場合、同じフォルダにstandard.bjt.bakという名前のバックアップファイルがあります。これコピーして.bjt部分を削除したら復元できます。)

開くとこんな感じです。↓

今回追加するモデルはこちら↓です。(こちらを参考にしました。)

*Low Noise Amp PC=0.4W Ic=0.15A Vcbo=60V Complementary 2SA1015
.model 2SC1815 NPN(Is=2.04E-15 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=100 Bf=300 Ne=1.5 Ise=0
+ Vceo=50 Icrating=150m mfg=TOSHIBA
+ Ikf=200m Xtb=1.5 Br=3.377 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=1 Cjc=1p Mjc=.3333
+ Vjc=.75 Fc=.5 Cje=25p Mje=.3333 Vje=.75 Tr=450n Tf=20n Itf=0 Vtf=0 Xtf=0)

.model 2SC1815-GR NPN(Is=2.04E-15 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=100 Bf=300 Ne=1.5 Ise=0
+ Vceo=50 Icrating=150m mfg=TOSHIBA
+ Ikf=200m Xtb=1.5 Br=3.377 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=1 Cjc=1p Mjc=.3333
+ Vjc=.75 Fc=.5 Cje=25p Mje=.3333 Vje=.75 Tr=450n Tf=20n Itf=0 Vtf=0 Xtf=0)

.model 2SC1815-Y NPN(Is=2.04E-15 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=100 Bf=200 Ne=1.5 Ise=0
+ Vceo=50 Icrating=150m mfg=TOSHIBA
+ Ikf=200m Xtb=1.5 Br=3.377 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=1 Cjc=1p Mjc=.3333
+ Vjc=.75 Fc=.5 Cje=25p Mje=.3333 Vje=.75 Tr=450n Tf=20n Itf=0 Vtf=0 Xtf=0)

*Low Noise Amp PC=0.4W Ic=0.15A Vcbo=50V Complementary 2SC1815
.model 2SA1015 PNP(Is=295.1E-18 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=100 Bf=300 Ne=1.5 Ise=0
+ Vceo=50 Icrating=150m mfg=TOSHIBA
+ Ikf=200m Xtb=1.5 Br=10.45 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=15 Cjc=66.2p
+ Mjc=1.054 Vjc=.75 Fc=.5 Cje=5p Mje=.3333 Vje=.75 Tr=10n Tf=1.661n Itf=0 Vtf=0 Xtf=0)

.model 2SA1015-GR PNP(Is=295.1E-18 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=100 Bf=300 Ne=1.5 Ise=0
+ Vceo=50 Icrating=150m mfg=TOSHIBA
+ Ikf=200m Xtb=1.5 Br=10.45 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=15 Cjc=66.2p
+ Mjc=1.054 Vjc=.75 Fc=.5 Cje=5p Mje=.3333 Vje=.75 Tr=10n Tf=1.661n Itf=0 Vtf=0 Xtf=0)

.model 2SA1015-Y PNP(Is=295.1E-18 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=100 Bf=200 Ne=1.5 Ise=0
+ Vceo=50 Icrating=150m mfg=TOSHIBA
+ Ikf=200m Xtb=1.5 Br=10.45 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=15 Cjc=66.2p
+ Mjc=1.054 Vjc=.75 Fc=.5 Cje=5p Mje=.3333 Vje=.75 Tr=10n Tf=1.661n Itf=0 Vtf=0 Xtf=0)

これ↑をコピペしてstandard.bjtの最後に追記します↓。

保存して閉じます。

確認

回路図にpnpを置いて右クリックします。

pick new transistorから一番下にスクロールしていくと「2SA1015」が追加されています。

準備は以上です。

SLOPE回路の作成

今回は以下のスペックのSLOPE回路を作っていこうと思います。

項目スペック
電源電圧5V
周波数100kHz

回路図はこちら↓です。(こちらを参考にしました。)

シミュレーション波形は以下の通りです。

VCCが電源電圧で5Vです。VSLOPEが出力電圧でだいたい100kHzで動いてます。

回路の作成とシミュレーションは以上です。

SLOPE回路の動作解説

この回路の発想を一言でいうと「定電流をコンデンサに流して、100kHzの周波数でコンデンサをディスチャージする。」って回路です。

イメージは以下ですね。

前に出した回路でいうと

SLOPEの傾きはQ=CVの式で決まります。

$$Q=CV$$

は以下のように変換できます。

$$It=CV$$

これをV=に変換したら

$$V=\frac{I}{C}t$$

となります。I:定電流、C:コンデンサ、t:チャージ時間、V:電圧

定電流回路

定電流の値はR4の抵抗値と両端電圧で決まります。

両端電圧の下側はVCCのR1,R2の分圧とバイポーラトランジスタの1Vfを足した値になります。

SLOPEの上昇スピードは電流値を大きくすれば早くなります。

電流値を大きくするにはR4の抵抗値を小さくすれば早くなります。

VCCが変わると電流値が変わり、SLOPEの速度が変わってしまい、周波数が変わってしまいます。

定電流を電源電圧に依存しないようにすると周波数がより精度良くなります。

ディスチャージ回路

NE555の中身はこちら↓です。

NE555のwikiから引用しました。https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/17/NE555_Bloc_Diagram.svg

今の回路のつながりを記載するとこう↓です。

NE555は1/3VCCと2/3VCCにスレッショルド電圧があります。

動きはこんな感じ↓です。

SLOPEが昇っていく速度を遅めにして(定電流を小さく&チャージコンデンサをでかく)していって、

RCフィルタのRを小さくしていけば、DUTYが太くなっていきます。

はい。今日は以上です。何かの参考になれば幸いです。

この回路を使ってフォワードコンバータを設計したので、そちらの記事も良かったら見てみて下さい。

参考サイト

NE555でのこぎり波 - ねがてぃぶろぐ
LTspiceに2SC1815やLM386等ユーザ定義のコンポーネントを登録する (r271-635)
回路シミュレーション LTspice の使い方(2) 部品の追加 - Qiita
概要LTspice の使い方 (部品の追加)はじめにLTspice は非常に便利に、回路のシミュレーションを行ってくれる。しかし、どうも部品が足りない。実際のところ「秋月」「千石」あたりで…