PWM制御方式に発生するむだ時間要素とは

皆様、お疲れ様です。

今日は「むだ時間」について説明とシミュレーション(Pspice for TI)でボード線図を確認してみました。という記事を書こうと思います。

本記事でわかること
  • PWM制御におけるむだ時間
  • むだ時間の伝達関数とボード線図
  • シミュレーションでの確認方法

スイッチングレギュレータのプラント伝達関数を解いて、ボード線図を描いて、制御系を設計して、いざFRAで周波数特性を測定しようとしたら「あれ?特性が予想と違う。。。なんで?」となっている方の参考になれば幸いです。

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むだ時間要素とは

PWM制御で必ず生じる遅れ要素です。

PWM制御ではDUTYを決定した後、どんなに誤差増幅器が変化してもその変化は次の周期でないと反応できません。この反応できない時間をむだ時間と言います。

むだ時間のイメージ

ワーストケースはDUTY=0%と判定したときでまるまる1周期分反応できなくなります。なのでモデル化するときは一般的には1周期分で計算します。

でもデジタル回路とかで1周期でAD変換して、次の周期でDUTYを反映する。としている場合は当然、最大2周期分遅れます。

このむだ時間は時間が遅れるだけです。なのでゲインは変わらず、位相が回って遅れるというような特徴があります。

むだ時間要素の伝達関数とボード線図

むだ時間要素の伝達関数は以下の式となります。

$$G(s)=e^{-sT_{PWM}}$$

Tpwm:スイッチング周期

ボード線図はシミュレーター(Pspice for TI)で確認しました。以下がシミュレーション回路図です。

むだ時間要素のシミュレーション回路図

Tpwm=10usecに設定しています。周波数にすると100kHzですね。この回路図でボード線図を描くべく、1Hz~1MHzのAC解析を行いました。

シミュレーション結果は以下になります。

むだ時間要素のボード線図(T=10usec)
緑:位相
赤:ゲイン

ゲインは一切変化なく、スイッチング周波数の1/10の10kHzくらいで30degくらい回っています。

100kHz付近では位相は回り切ってしまっているので、制御設計する際はこれ以前に系のゲインを落とし切っておくように設計しないといけませんね。

むだ時間あり/なしの周波数特性の比較

先日作った非絶縁型降圧スイッチングレギュレータ(電流制御モード)にむだ時間要素の有り無しパターンでの周波数特性の違いを見てみます。

まず無しの場合

むだ時間要素無しの降圧スイッチングレギュレータ(電流制御モード)の動作モデル

ボード線図は以下のようになります。

むだ時間要素無しの降圧スイッチングレギュレータ(電流制御モード)のボード線図

それでは有りの場合

むだ時間要素有りの降圧スイッチングレギュレータ(電流制御モード)の動作モデル

ボード線図は以下のようになります。

むだ時間要素有りの降圧スイッチングレギュレータ(電流制御モード)のボード線図

高周波の位相がぐるんと回っていますね。もし実物との周波数特性に差がある場合はむだ時間要素を考慮できているか?を考えてみて貰えればと思います。

はい、本記事は以上になります。

誰かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!