【LLCコンバータ】マルチレベル方式LLCコンバータの動作原理

皆さんお疲れ様です。今日はLLCコンバーターを勉強する記事の第10回目です。

非対称ハーフブリッジ型LLCコンバータが対象です。

本記事では、マルチレベル動作について解説したいと思います。

LLCコンバーターの欠点である。出力電圧範囲の狭さを改善する手法の1つです。

マルチレベル方式LLCコンバータの動作原理を知りたい

出力電圧範囲を広くしたいけど、マルチレベル方式の動作がわからないとお悩みの方の参考になれば幸いです。

それではやっていましょう。

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回路図

まずは回路図です。これです↓。

マルチレベル方式非対称ハーフブリッジ型LLCコンバータ

通常のLLCコンバータと比べると中間にQ2と下側にQ4が入り込んだ形になってます。

そして、Q2とQ3の間にキャパシタの中間電圧が繋がってます。

あ?それで?どうやって動くの?を説明しようと思います。

動作原理の解説

イメージ

この回路は「出力電圧を小さくしたいとき」と「出力電圧を大きくしたいとき」で動作が変わります。

スイッチのON/OFFを工夫して、共振回路(Cr,Lr,Lm)に印可する電圧を

  • 出力電圧を大きくしたいとき⇒共振回路をVin or 0Vでスイッチング(通常のLLCの動き)
  • 出力電圧を小さくしたいとき⇒共振回路を1/2Vin or 0Vでスイッチング

と2パターンで動きます。したがって、出力電圧の特性は以下のようなイメージとなります。

マルチレベル方式の出力電圧vsスイッチング周波数のイメージ

こうすることで出力電圧範囲を広くとれます。

それではそれぞれのときでどう動くのか?を説明します。

出力電圧を大きくしたいとき

このときは簡単です。モードは以下の2通りです。

モードQ1Q2Q3Q4備考
1ONOFFOFFON共振回路にVinを印可
2OFFONONOFF共振回路に0Vを印可

まずモード1でQ1,4をONして、共振回路にVin電圧を印可します↓。

モード1

つづいてモード2でQ2,3をONして、共振回路に0V電圧を印可します。

モード2

これを繰り返したら普通のLLCコンバータと同じ動きですね。出力電圧を計算式もいつも通りの以下です。

$$\small{
V_{out}=\frac{1}{2}V_{in}\frac{1}{\sqrt{\left(1+\frac{1}{S}-\frac{1}{SF^2}\right)^2+Q^2\left(F-\frac{1}{F}\right)^2}}
\\
S=\frac{L_m}{L_r},F=\frac{f}{f_r},f_r=\frac{1}{2\pi\sqrt{L_rC_r}},Q=\frac{\sqrt{\frac{L_r}{C_r}}}{R_L’},R_L’=\frac{8}{\pi^2}\left(\frac{N_1}{N_2}\right)R_L
}$$

Vout:出力電圧[V], Vin:入力電圧[V], Lm:励磁インダクタンス[H], Lr:漏れインダクタンス[H],Cr:共振コンデンサ[F], f:スイッチング周波数[Hz], fr:Lr&Cr共振周波数[Hz], N1:1次巻き線, N2:2次巻き線, RL:負荷抵抗[Ω]

これは簡単ですね。

出力電圧を小さくしたいとき

このときが多少厄介です。モードが以下の3種類になります。

モードQ1Q2Q3Q4備考
1ONOFFONOFF共振回路に1/2Vinを印可
2OFFONONOFF共振回路に0Vを印可
3OFFONOFFON共振回路に1/2Vinを印可
1⇒2⇒3⇒2⇒1⇒2…と繰り返します。

まずモード1でQ1,3をONして、共振回路に1/2Vin電圧を印可します↓。

モード1

つづいてモード2でQ2,3をONして、共振回路に0V電圧を印可します↓。

モード2

そしてモード3でQ2,4をONして、共振回路に1/2Vin電圧を印可します↓。

モード3

これを1⇒2⇒3⇒2⇒1⇒2と繰り返すことで共振回路に1/2Vinと0Vを交互に印可していることになります。

つまり出力電圧の計算式はいつもの1/2となり、、、

$$\small{
V_{out}=\frac{1}{4}V_{in}\frac{1}{\sqrt{\left(1+\frac{1}{S}-\frac{1}{SF^2}\right)^2+Q^2\left(F-\frac{1}{F}\right)^2}}
}$$

となります。

シミレーションでの動作確認

「はいはい、あなたがそう思っているだけでしょ。証拠を見せて下さいよ。」と思うかもしれないので、シミュレーションで確認してみます。

少し動作がややこしい「出力電圧を小さくしたいとき」を確認してみようと思います。

回路図は以下の通りです。

マルチレベル方式非対称ハーフブリッジLLCコンバータ(PSIM)

シミュレーション条件は以下の通りです。

動作条件は以下です。

パラメータ
入力電圧400V
スイッチング周波数8kHz
共振周波数12kHz

回路定数は以下です。

パラメータ
共振コンデンサ容量値Cr380[nF]
漏れインダクタンスLr460[uH]
励磁インダクタンスLm2.3[mH]
巻き線比(N1/N2)10

普通LLCコンバータとして動かしたら、出力電圧が24Vくらいになるシミュレーションです。今回はそれをマルチレベル方式で動かすことで出力電圧が12Vになるのを見てみます。

測定波形が以下の通りです。

Q1~Q4を先ほどの説明の通りに動作させると共振回路電圧が1/2Vinで印可されています。

(今回はVin=400Vのため、共振回路電圧が200Vとなっています。)

その結果、出力電圧が期待通り12Vが出ています。問題ないですね。

はい、以上でマルチレベル方式の動作について終わります。

誰かの何かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。