どうも。今回はDCDCコンバータのソフトスタート機能について解説します。
DCDCにソフトスタート機能は何のためにあるの?
ソフトスタート機能ってどうやって回路で実現しているの?
といった疑問に対して参考になれば幸いです。
私が現在設計中の240Wフォワードコンバータにソフトスタート回路を追加してLTspiceで効果を見ていこうと思います。
こちらの記事にフォワードコンバータ設計の概要を解説しておりますので、良かったら見てみて下さい。
ソフトスタート機能って何のためにあるの?
これは「ソフトスタート機能が無かったらどうなるか?」を考えたら一撃で解決します。
百聞は一見に如かずということで見てみましょう。
↓ここにソフトスタート機能がないフォワードコンバータ回路(140V入力/24V10A出力)があります。(各回路の詳細記事はこちら)
この回路をシミュレーションすると以下のような動作をします。
5msecレンジで見た波形
動作開始直後を拡大した波形
出力電圧(Vout)に24Vが欲しいところで動かした直後32Vまで上がっています。
また出力コイル(Lout1)に10A程度が流れる想定なのに40A以上流れています。
動かし始めは必ず目標値以上の電圧や電流になる電源なんて嫌でしょ。そんな電源に繋げてホントに後ろの部品大丈夫なん?
って思いますよね。それを防止するためにソフトスタート機能があります。
ちなみに何で動作直後にオーバーシュートするのか?
先ほどの誤差増幅器出力電圧(VC)を見てください。
VC電圧が上に振り切れています。動作開始直後は出力電圧は0Vです。
この出力電圧0Vの状態を見た誤差増幅器が「あっ出力電圧が小さい!DUTYを太くしなくては!!!」と思いっきりフィードバックをかけます。
その結果VC電圧が限界まで振り切れます。
そうするとDUTY=100%となり、出力電圧を思いっきり上げるように動きます。
その結果、出力電圧がオーバーシュートします。
そのあとVC電圧が急降下しています。
これは誤差増幅器が出力電圧が急上昇している様子をみて「あっ上がってきた、DUTY細めて!細めて!」と抑えるようにフィードバックをかけますが
時すでに遅しで出力電圧がオーバーシュートします。
ソフトスタート機能とは
言葉の通りですが「ソフトにスタートさせる」機能です。
要するにスタートの時はゆっくり起動させる機能です。
そんだけです。
ソフトスタート回路
回路にするとどういう風になるかというと発想としては
「回路動作開始時はVCとは別にゆっくり立ち上がるVCみたいな電圧を用意してやってそれでDUTYに制限をかける。」です。
回路としてはこんな感じです。
動作解説
起動直後にI1でコンデンサに定電流を流す。そうするとSS電圧は線形にゆっくり増加していく。(Q=CVの式に従って)
それとSLOPE電圧を比較して動作直後は即リセットがかかる信号が出力される。
一方VCは振り切れているので、DUTY=100%要求相当のリセット信号がくる。
それらをOR(A2)でとってやることでどっちかがリセットかかるとHになる。
C7のcapに充電が完了するとD8のツェナーダイオードで一定電圧6Vにクランプされる。そのころにはVCにより安定電圧が出力するようになっている。
ごたごた解説しましたが、シミュレーションで確認しましょう。
シミュレーション実行
せっかくなので、ソフトスタート回路あり/なしで横並びにしてみました。
ソフトスタート回路あり
ソフトスタート回路なし
一目瞭然ですね。出力電圧はオーバーシュートせずに徐々に24Vに登って行っています。
オーバーシュートが消えており、問題ありません!ちょっとゆらゆらしているのが気になりますが、それは位相補償回路の問題でしょう。たぶん。
まとめ
本日はソフトスタート機能と回路での実現方法について解説しました。
ソフトスタート機能がないと出力電圧が起動後にオーバーシュートする。
DUTYを制限するようにゆっくり立ち上がる電圧を用意してソフトスタート機能を実現する。
って感じですね。以上です。
何かの参考になれば幸いです。最後まで読んで頂きありがとうございました。