【ACDC】PWM整流器の動作原理について解説

みなさま、お疲れ様です。

本日はPWM整流器の動作原理を解説してみようと思います。インバーターの逆方向ですね。

PWM整流器がどう動いているのか分からない!

と悩みを持たれている方の参考になれば幸いです。

まず回路図はこんな形をしています↓。

PWM整流器

ちなみに似たような動きをするトーテムポール型ブリッジレスPFCの動作原理はこちらの記事で解説しているので、良かったら読んでみて下さい。

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結局、昇圧DCDCと同じ考え方

ACDCは少しとっつきにくいですが、一瞬で切り取ると昇圧DCDCと同じ動作しています。どういう動作かと言うと、

リアクトル電流に電源電圧かけてエネルギーを貯めて、それを出力側へ持ってく。

ということです。

昇圧DCDCの動作モード②(L-sideがOFFしてリアクトル電流を出力側へ持ってく。)

PWM整流器でも4つのスイッチをいい感じに動かして、この2つの動作を繰り返しています。

以降で詳しく説明します。

6つの動作モード

スイッチのON/OFFのタイミングは以下の6通りです。

動作モードはスイッチのオンオフ状態に応じて、以下の6つのモードに分けられます。

モードQ1Q2Q3Q4備考
1OFFONOFFON上側半波のときの充電
2ONOFFOFFON上側半波のときの放電
3ONOFFONOFF上側半波のときの充電
4OFFONOFFON下側半波のときの充電
5OFFONONOFF下側半波のときの放電
6ONOFFONOFF下側半波のときの充電

AC入力の上側半波のときにモード1,2,3。下側半波のときにモード4,5,6となります。

上側半波のときは
モード1⇒モード2⇒モード3⇒モード2⇒モード1・・・以降繰り返し

下側半波のときは
モード4⇒モード5⇒モード6⇒モード5⇒モード4・・・以降繰り返し

と動作します。

それでは各モードで具体的にどういう風に動いているかを解説します。

上側半波のとき

モード1:Q2&Q4がON(リアクトルにエネルギーを貯める)

モード1はQ2,4がオンしています。電源電圧は上側半波が印加されています。

電流経路は以下の通りです。

モード1の電流経路

リアクトルに電源電圧が印加され、エネルギーをチャージします。

リアクトル電流のリップルは以下のように計算できます。

$$\small{
ΔI_L=\frac{V_{ac}}{L}T_1
}$$

モード2:Q1&Q4がON(リアクトルのエネルギーを出力へ放出)

モード2では、Q1,4がオンします。電源電圧は継続して上側半波が印加されています。

電流経路は以下の通りです。

モード2の電流経路

リアクトルに(Vac-Vdc)の電圧が印加されます。Vdc>Vacですが、リアクトル電流はすぐには方向を変えられないので、出力側に電流が流れます。

このときのリアクトルのリップル電流は以下のように計算出来ます。

$$\small{
ΔI_L=\frac{V_{ac}-V_{dc}}{L}T_2
}$$

モード3:Q1&Q3がON(リアクトルにエネルギーを貯める)

モード3では、Q1,3がオンします。電源電圧は継続して上側半波が印加されています。

電流経路は以下の通りです。

モード3の電流経路

リアクトルに電源電圧が印加され、エネルギーをチャージします。

リアクトル電流のリップルは以下のように計算できます。

$$\small{
ΔI_L=\frac{V_{ac}}{L}T_3
}$$

結局、リアクトルにエネルギーを貯めて、出力側へ放出を繰り返して昇圧します。

昇圧DCDCと同じですね。

上側半波において、Q2とQ3は同時にONしない

ここで注意ですが、上側半波のときにQ2とQ3は同時にONしません。

Q2とQ3がONした時を考えれば、その理由が分かります。回路は以下のようになりますね。

もしQ2とQ3がONしたら、、、

簡単に整理して描くと以下のようになってます。

Vdcが逆接続された感じになる。

せっかく出力コンデンサに充電したのに、電荷がジャバ―っと電源側に抜けていって、出力電圧が下がってしまいます。

これでは、うまいこと整流は出来ません。だから上側半波において、Q2とQ3は同時にONしません。

下側半波のとき

モード4:Q2&Q4がON(リアクトルにエネルギーを貯める)

モード4はQ2,4がオンしています。電源電圧は下側半波が印加されています。

電流経路は以下の通りです。

モード4の電流経路

リアクトルに電源電圧が印加され、エネルギーをチャージします。

リアクトル電流のリップルは以下のように計算できます。

$$\small{
ΔI_L=\frac{V_{ac}}{L}T_4
}$$

モード5:Q2&Q3がON(リアクトルのエネルギーを出力へ放出)

モード5では、Q2,3がオンします。電源電圧は継続して下側半波が印加されています。

電流経路は以下の通りです。

モード5の電流経路

モード2と同様にリアクトルの電流が流れ続けようとする特性を利用して、出力側に電力を供給します。

VacからQ3を通って、Vdcだけ電圧降下して、Q2を通ってリアクトルとたどり着いたら、結局(Vac-Vout)の電圧がリアクトルにかかってます。

よくできてますねぇ。

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_L=\frac{V_{ac}-V_{dc}}{L}T_5
}$$

モード6:Q1&Q3がON(リアクトルにエネルギーを貯める)

モード6では、Q1,3がオンします。電源電圧は継続して下側半波が印加されています。

電流経路は以下の通りです。

モード6の電流経路

リアクトルに電源電圧が印加され、エネルギーをチャージします。

リアクトル電流のリップルは以下のように計算できます。

$$\small{
ΔI_L=\frac{V_{ac}}{L}T_6
}$$

下側半波のこんな感じにリアクトル電流を貯めたり放出したりして、昇圧します。

下側半波において、Q1とQ4は同時にONしない

上側半波のQ2とQ3が同時にONしないのと同様の理由で、Q1,4もONしません。

説明は省略します。

どうやってPWM波形を作ったらいいのか?

上側半波のときは
モード1⇒モード2⇒モード3⇒モード2⇒モード1・・・以降繰り返し

といっても、どうやってそんな波形を作るんだよ。

と思われるかもしれないので、その辺も説明します。

回路で示してしまうと以下のようにします。

PWM整流器のゲート波形生成回路

搬送波と呼ばれる三角波と変調率mの正弦波をプラスマイナス反転させた波形msin(ωt)と-msin(ωt)を用意して、比較器で比較してそれぞれのゲート信号を生成します。

こうしてやると、以下のようなあんばいでうまいこと行きます。

PWM整流器のゲート信号の生成イメージ
①がモード1、②がモード2、③がモード3…⑥がモード6を示す。

1周期ごとに見るとちゃんと上側半波のときは①⇒②⇒③⇒②⇒①となってます。下側半波も同様です。

うまいことできてますねぇ。

シミュレーションで動作確認

「はいはい、そういう動作原理だと君が思ってるってことはわかったよ。でもそれだけだと”僕を信じて下さい。”としか言ってないよね。証拠を提示してくださいよ。証拠を。」

という方に向けて、PSIMでシミュレーションをした結果を示します。PSIMの導入方法はこちらの記事で解説しておりますので、良かったら読んでみて下さい。

まず回路は以下の通りです。

PWM整流器のPSIM回路図
(入力=100Vac、負荷抵抗=300Ω、出力電圧指示値=200Vとしました。)

制御はトーテムポール型ブリッジレスPFCで解説した方法と同じです。電圧をフィードバックして、電流指令値に変えて、正弦波電流になるように変調率を調整する。って感じです。

そしてシミュレーション結果の波形が以下です。

シミュレーション結果

ちゃんとリアクトル電流が正弦波状になっており、出力電圧が200Vに安定しています。

いい感じです。

搬送波と変調率の関係は以下の通りです。

比較波と変調率の波形

拡大するとこんな感じです↓。

比較波と変調率の波形(拡大)

想定通り、モードが①⇒②⇒③⇒②⇒①と変化していってます。

はい、以上となります。

何かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!