【技術書の書評】LSI設計者のためのCMOSアナログ回路入門

皆さん、お疲れ様です。技術書の書評をやってみようと思います。本記事の内容は個人の主観が含まれます。ご理解の上、一意見として参考にしていただければ幸いです。

今日はCMOSアナログ回路入門という技術書の書評をしてみたいと思います。これっすね↓。価格は3080円ですね。はい。

CMOSアナログ回路を始める社会人はほぼみーーーんな買っているんじゃないでしょうか?私も社会人になりたての時に買いました↓。

結構年季が入っているなぁ。。。

入門書なのはわかるんだけど、、、分かりやすくするためか端折り過ぎている印象。導出過程をもっと充実してくれたらいいのになぁ。

ってのがまぁ感想ですね。(個人の感想です。)

具体的にどういうところが?を記事にしてみようと思います。買おうかな?どーしよっかな?と思っている人の参考になれば幸いです。

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購入のきっかけ

購入当時は社会人一年目でした。ICの設計部門に配属されて、社内研修をしていた頃です。その研修で 電子回路のことが全くわからなかったので「これはやばいな。」と思って買いました。

今から振り返ってみると、当時の私が求めていたのは以下の2点じゃないかなぁと思います。

  • 入門的な回路(例えば2段OPAMP)の設計方法
  • よく使う電子回路の動作原理

期待が外れたところ

“LSI設計設計者のための”とタイトルに書いてありますが、この本を読んだだけでは、入門的な回路(例えば2段OPAMP)を設計出来るようにはなりません。私はなれませんでした。

おめぇの実力不足だろ!!勉強しろ!!!

いや~ムズかったんですよ。それが。

どういうところが難しかったのか例を出します。

本書の11章に2段構成のOPアンプの設計法という項があります。ここを私は何度も読みましたが、どうしても理解できませんでした。

まず入り口から分かりません。

このOPアンプに微小な作動信号vinを入力すると、信号はgm1,2vinの電流に変換されます。この信号電流gm1*1/2Δvinは差動増幅回路の出力インピーダンスro1//ro4を通して初段の出力信号電圧gm12vin(ro2//ro4)に変換されます。

「LSI設計者のためのCMOSアナログ回路入門 11.4.1 OPアンプを構成する素子が飽和領域で動作する条件」より引用

待て待て待て!!わからん!わからん!!わからん!!!!!!

「はーい、3章に戻って勉強しなおして、それから5章に行って勉強しなおしてね。」ってなもんです。さて勉強しなおして、分かったとしましょう。

さらにわからないは続きます。「11章4.2OPアンプが安定に動作する条件」です。

ここでは2段OPアンプの位相余裕度を60degを保持しようとしたら位相補償容量Ccと出力容量Coutの条件式がCc>0.2Coutになるよ。

っというオペアンプ設計上かなり序盤に出てくる制約式が出てきます。この式がサラッと出てき過ぎていて当時の私は「なんでそうなるの?」とそこから動けなくなりました。

制御理論の安定性条件を勉強しなおしてくる。→わからん。

小信号の計算の仕方を勉強しなおしてくる。→わからん!

「CMOS OPアンプ回路の 実務設計の基礎」という本を頼ってみるがわからん!!

会社の書庫にあるラザビ本を引っ張ってきて読むがもっとわからん!!!

Cc>0.2Cout

この式がどうやって出てくるのかがさーっぱり分からないです。本書では「だまされたと思って手計算で設計してみてくれ」と書いてあり、私もそうしたいのですが、出来ない!!

自分が無力過ぎて辛くなりました。

どう設計したらいいの?が知りたい人はここを見るべし

話は本書から少し離れますが、結局2段OPアンプ設計できんのけ?と思われている方、以下のHPを見てみましょう。私はここ↓で解決しました。英語ですがね。オックスフォード大学の教授?が運営しているのかな?

AICDESIGN.ORG

もっというと、ここ↓でオックスフォード大学の授業資料が無料で見れます。ここに2段オペアンプやそのほか色々な回路の動作原理や設計手順、そして例題が出されています。

2016 Short Course Notes – AICDESIGN.ORG
Click on the following to export the pdf lectures Contents(160425) Lecture01-(150706) Lecture02-(131209) Lecture03-(151116) Lecture04-(140310) Lecture05-(140805...

私が求めていたのはこれでした。

ちなみにこの人の本もあります。1万円以上のたっけー本ですが、マジで丁寧に解説されているいい本でした(英語ですがわかりやすい)。高いから買わずに、大学の図書館で借りましょう。一応以下にリンク置いときます。

そうは言っても役に立ったところ

さて、本書に戻ります。そうは言っても良かったところもあります。それを書いてみようと思います。

  • 差動入力型のスイッチトキャパシタ回路を初めて見て、動きが分からな過ぎて吐き気を催したときに本書の第8.1の単入力の記述を読んで基本動作がわかった。
  • 7.4章でバンドギャップリファレンス回路が何で温特が無くなるのか?が分かった。
  • 7.3章の低電源電圧用電流源回路の説明でなんで低電圧で使えるか分かった。

ごちゃごちゃ言いましたが、割と役にたってるじゃんって感じですね。すみません。

まとめ

ごちゃごちゃ言いましたがまとめです。

  • 本書では私は回路設計できるようにはならなかった。
  • ざっくり動作を理解したりするのには役に立った。

個人の感想です。終わり!!