皆様、お疲れ様です。
本日は
- MOSやIGBTのデータシートにある熱抵抗と許容損失って何?
- 何に使うの?これ?
という方に向けて熱抵抗と許容損失が何なのか?それらはどうやって使うのか?を解説してみようと思います。
熱抵抗、許容損失とは
熱抵抗とは
熱抵抗とは損失1W発生したら、温度が何℃上昇するか?を示す値です。
オームの法則の熱バージョンです。
オームの法則における抵抗は「電流1A流れたら、電圧が何V上昇するか?」を示す値です。
$$\small{
R=\frac{V}{I}
}$$
ですね。(R:抵抗、V:電圧、I:電流)
熱抵抗Rthは「損失1W発生したら、温度が何℃上昇するか?」です。同じですね。
$$\small{
R_{th}=\frac{T}{W}
}$$
となります。(Rth:熱抵抗、T:温度、W:損失)
例えば、あるパワーデバイスの熱抵抗Rθjcが5[℃/W]だったとします。
jcとはjunction~chipまでの熱抵抗という意味です。絵にするとこんな感じです↓。
チップ温度Tc=60℃のときに、パワーデバイスが5W損失したとします。そのときのジャンクション温度Tjは熱抵抗を使って、以下のように計算できます。
$$\small{
T_j=R_{θjc}*W+T_c=5[℃/W] * 5[W] + 60[℃]=85[℃]
}$$
つまり、ジャンクション温度Tjは85℃まで上がるよ。となります。
許容損失とは
許容損失とはデバイスの限界温度に達する損失値のことです。
デバイスには絶対最大定格温度というものがあります。「これ以上の温度で使わないでね。」ってことです。
例えば、ジャンクション温度の最大値Tjmaxが150℃のデバイスがあったとします。
Tc=25℃のときTjmaxとは125℃ほど余裕があります。言い換えれば「ΔT=125℃が発生する損失[W]までは許容できる。」ってことです。
これが許容損失です。
ここで仮に熱抵抗Rθjc=5[℃/W]としたときに許容損失はいくらになるでしょうか。
$$\small{
R_{θjc}=\frac{T}{W}⇒W=\frac{T}{R_{θjc}}
}$$
↑この式で計算できます。
$$\small{
W=\frac{T}{R_{θjc}}=\frac{125}{5}=25[W]
}$$
つまり25WがTc=25℃における許容損失ということになります。
知ってしまえば、簡単ですね。
パワーデバイスの選定や熱設計に使う!
これらはパワーデバイスの選定や熱設計に使用します。
仮にチップ温度Tcが100℃まで使用するのであれば、Tjmaxまでの余裕が50℃となります。それで使用する条件におけるパワーデバイスの損失(導通損失やスイッチング損失)は許容損失内に収まっているか?
もし収まっていないのであれば、その条件で使用したらTjmaxを超えてしまいます。特性が劣化したり、寿命が速まったり、最悪壊れてしまう可能性があります。
そうならないように熱抵抗が良い素子を選ぶとか、Tcが100℃まで達さないように熱設計をするとかしないといけません。
はい、そんな感じで本記事は以上です。
誰かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!