みなさま、お疲れ様です。
さて、単相インバーターに関する記事の第7回目です。
本日はユニポーラSPWM制御の単相インバーターの動作原理を解説してみようと思います。
- ユニポーラSPWM制御のインバーターがどう動いているのか分からない!
と悩みを持たれている方の参考になれば幸いです。
まぁ、、、言ってしまえば過去に解説したPWM整流器の放電動作です。
まず今回の対象の単相インバーターの回路図はこんな形をしています↓。
回路自体は過去に解説したバイポーラSPWMと同じです。スイッチングの仕方がちょっとややこしくなります。
Vdc ⇔ 0V or 0V ⇔ -Vdcを繰り返しリアクトルに印可するように動く
バイポーラSPWMではVdc ⇔ -Vdcの電圧をリアクトルを印可して交流電圧を生成しますが、ユニポーラSPWMでは上側半サイクルではVdc ⇔ 0V、下側半サイクルでは0V ⇔ -Vdcの電圧をリアクトルに印可して交流電圧を生成します。
動作イメージは以下の通りです↓。
こうなるようにスイッチを動かします。
6つの動作モード
さてどういう風にスイッチを動かしたらそうなるのか?ということですが、
スイッチのON/OFFのタイミングは以下の6通りです。
動作モードはスイッチのオンオフ状態に応じて、以下の6つのモードに分けられます。
モード | Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ON | OFF | ON | OFF | 上側半波のときの0V印可その① |
2 | ON | OFF | OFF | ON | 上側半波のときの+VDC印可 |
3 | OFF | ON | OFF | ON | 上側半波のときの0V印可その② |
4 | OFF | ON | OFF | ON | 下側半波のときの0V印可その① |
5 | OFF | ON | ON | OFF | 下側半波のときの-VDC印可 |
6 | ON | OFF | ON | OFF | 下側半波のときの0V印可その② |
AC入力の上側半波のときにモード1,2,3。下側半波のときにモード4,5,6となります。
上側半波のときは
モード1⇒モード2⇒モード3⇒モード2⇒モード1・・・以降繰り返し
下側半波のときは
モード4⇒モード5⇒モード6⇒モード5⇒モード4・・・以降繰り返し
と動作します。
それでは各モードで具体的にどういう風に動いているかを解説します。
モード①:上側半サイクルの0V印可その① Q1,Q3がON
まずQ1とQ3がONします。これによりリアクトル両端にはVdcがかかるため、足し引きで0Vの電圧が印可されていることとなります。
エネルギーが還流している状態です。
モード②:上側半サイクルの+VDC印可 Q1,Q4がON
つぎにQ3がOFFしてQ4がONします。これでQ3,4のLEGは0Vに落ちますので、リアクトルに+VDCが印可されていることになります。
リアクトルにエネルギーを貯めている状態です。
モード③:上側半サイクルの0V印可その② Q2,Q4がON
そしてQ1がOFFしてQ2がONします。今度はQ1,2のLEGは0Vに落ちますので、リアクトルに0Vが印可されていることになります。
これまたモード①と同様でエネルギーが還流している状態です。
このようにモード①->②->③->②->…と充電->還流->充電->還流と繰り返し行われています。これでDutyを調整することで電圧を調整して交流電圧を生成します。下側半サイクルも同様です。
モード④:下側半サイクルの0V印可その① Q2,Q4がON
こちらもまずQ2がONしてQ4がONします。これまたリアクトルに0Vが印可されていることになります。
エネルギーが還流している状態です。
モード⑤:下側半サイクルの-VDC印可 Q2,3がON
つぎにQ4がOFFしてQ3がONします。これでQ3,4のLEGはVDCに上がりますので、リアクトルに-VDCが印可されていることになります。
リアクトルにエネルギーを貯めている状態です。
モード⑥:下側半サイクルの0V印可その② Q1,3がON
そしてQ2がOFFしてQ1がONします。今度はQ1,2のLEGは+VDCに上がりますので、リアクトルに0Vが印可されていることになります。
これまたモード④と同様でエネルギーが還流している状態です。
このように下側半サイクルでもモード④->⑤->⑥->⑤->…と充電->還流->充電->還流と繰り返し行われています。これでDutyを調整することで電圧を調整して交流電圧を生成します。
どうやってPWM波形を作ったらいいのか?
上側半波のときは
モード1⇒モード2⇒モード3⇒モード2⇒モード1・・・以降繰り返し
といっても、どうやってそんな波形を作るんだよ。
と思われるかもしれないので、その辺も説明します。
回路で示してしまうと以下のようにします。
搬送波と呼ばれる三角波と変調率mの正弦波をプラスマイナス反転させた波形msin(ωt)と-msin(ωt)を用意して、比較器で比較してそれぞれのゲート信号を生成します。
こうしてやると、以下のようなあんばいでうまいこと行きます。
1周期ごとに見るとちゃんと上側半波のときは①⇒②⇒③⇒②⇒①となってます。下側半波も同様です。
うまいことできてますねぇ。
シミュレーションで動作確認してみる
「はいはい、動作がそうなることはわかりました。でもあなたが思っているだけですよね?」と思っている方に向けてシミュレーションで動作確認してみます。
今回はQspiceという回路シミュレータで確認しました。Qspiceは無料でおススメの回路シミュレータです。過去にQspiceに関する記事も作成しております。まだ使ったことなくて興味ある人は是非読んでみて下さい。
さて、回路図は以下の通りです↓。
※主回路のどこかとGNDをインピーダンスで接続してあげないとシミュレーション回りません。今回は1pFのCapと100MΩの抵抗で接続していますが、影響与えない程度であれば、何でも良いと思います。
さて、シミュレーション結果が以下の通りです↓。
いい感じです。ちゃんとリアクトルに+VDCと0Vが掛かりって上側半サイクルを作り、0Vと-VDCがかかって下側半サイクルを作っています。
まとめ
つまりユニポーラSPWMっていうのは以下の特徴があります。
- +VDC , 0V , -VDCの3つの電圧を作ってリアクトルに印可する。
- リアクトル印可電圧がVDCとなるので、2VDCとなるバイポーラSPWMと比べてリップル電流が小さくなる。つまり、リアクトルを小さく作れる。
複雑になるけど、バイポーラSPWMの上位互換ですね。
はい、以上で本記事は終わります。誰かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!!