みなさま、お疲れ様です。
本記事ではMOSFETの損失にはどういった種類があるのか?それらはどう計算できるのか?について解説しようと思います。
- DCDCとかの効率ってどうやって計算すればいいの?
- MOSFETの損失ってどうやって計算したらいいの?
とお悩み方の参考になれば幸いです。
各損失とその計算方法
ON抵抗損失
MOSFETがONのときにON抵抗に電流が流れて発生する損失です。
計算式は以下の通りです。
$$\small{
P_{Ron}=R_{on}*I_D^2*\frac{T_{on}}{T_{SW}}
}$$
Ron:ON抵抗[Ω]、ID:MOSFETに流れる電流[A]、Ton:ON抵抗導通時間[sec]、Tsw:スイッチング周期[sec]
単純にV*Iしてるだけって感じでわかりやすいですね。
Bodyダイオード損失
MOSFETには構造上どうしてもソースからドレインに寄生ダイオードが存在します。それをBodyダイオードと言います。
そこに電流が流れると損失が発生します。
計算式は以下の通りです。
$$\small{
P_{BodyDi}=Vf*I_D*\frac{T_{BodyDi}}{T_{SW}}
}$$
Vf:BodyダイオードのVf[V]、Tbodydi:Bodyダイオード導通時間[sec]
これも単純にV*Iしてるだけですね。
スイッチング損失
MOSFETがON→OFFもしくはOFF→ONに切り替わるときに生じる損失です。
これは計算式が2種類あります。
まず教科書でよく見るのがこの式です↓。
$$\small{
P_{SW}=\frac{1}{6}*V_{DS}*I_D*\frac{T_r}{T_{SW}}
}$$
VDS:ドレイン-ソース間電圧[V]、Tr:ターンオン時間[sec]
イメージとしてはこんな感じに電圧と電流が遷移している想定でしょう。
塗りつぶしエリアが損失で、細かい計算をすると1/6になるんでしょう。まぁ雰囲気的にそんな感じします。
でも実際、電圧と電流がこんな綺麗になる?理想的すぎやしないかい?って気がします。
続いてメーカーのデータシートやアプリケーションノートでよく見るのがこの式です↓。
$$\small{
P_{SW}=\frac{1}{2}*V_{DS}*I_D*\frac{T_r}{T_{SW}}
}$$
イメージとしてはこんな感じに電圧と電流が遷移している想定でしょう。
がっつりハードスイッチングしているワーストケースで計算しているって感じですね。
メーカーの『これがワースト!これ以上は悪くならないはず!良くなる方向になるはず!でも実際は実測してね!!!』という気持ちが伝わってくる計算式です。
まぁ実際はこの2つの式の間だったり、そうじゃなかったりするんですかね。ものに拠りますかね。まぁはい。
IGBTとかだとデータシートにターンオン時損失Eon[J]とかを記載してくれてたりします。なので
$$\small{
P_{SW}=E_{on}*\frac{T_r}{T_{SW}}
}$$
としたらいいので、楽ですね。
この損失はスイッチングするたびに発生します。
ゲートチャージ損失
スイッチングするときにゲート電圧を上げます。それはつまりゲート端子にあるキャパシタに電荷をチャージして電圧を持ち上げているということになりますので、その損失が生じます。
計算式は以下の通りです。
$$\small{
P_{gate}=C_{iss}*V_{gate}^2*f_{SW}
}$$
Ciss:入力容量[F]、Vgate:ゲート電圧[V]
この損失もスイッチングするたびに発生します。
リバースリカバリ損失
これはちょっととっつきにくいですが、さきほどMOSFETにはもれなくBodyダイオードがついてくると書きましたが、これに電流が流れている状態からそうでない状態に切り替わった時に逆方向に電流が流れるという特性です。
まず、順方向に電流が流れています↓。
逆バイアスされてダイオードはOFFすると思いきや逆方向にドンっと電流が流れます↓。
なぜこんなことが起きるのか?というとP-N間の空乏層が云々かんぬんといった眠たい話になります。
とにかく起きます。それが損失になるんですね。その計算式は以下の通りです。
$$\small{
P_{rr}=E_{rr}*T_{rr}*f_{SW}
}$$
ErrとTrrはデータシートに載っているはずの値です。Errはリバースリカバリ損失、Trrはリバースリカバリ時間。それが1秒間にfsw回起きるからfswを掛けてます。
出力容量損失
出力容量に電荷をチャージするときに生じる損失です。ゲートチャージ損失の出力容量版と捉えたらまぁ理解できるかなと。
MOSFETがON/OFFするたびに出力容量Coss(=Cgd+Cds)に充放電される電荷が損失となります。
以下の式で計算します。
$$\small{
P_{coss}=C_{oss}*V_{DS}^2*f_{SW}
}$$
Coss:出力容量[F]
はい、こんな感じで各式を用いて、損失を計算することが出来ます。これらを合わせるとMOSFETの損失となるわけですね。
例えば、これでDCDCの損失を計算できるか?というと、、、まだ難しいんですねぇ。
実際はリアクトルやトランスの損失(銅損、渦電流損、鉄損)とか配線損失とか、出力容量のESR損失とか細かいのを気にしないといけません。
だから、効率を計算するっていうのは難しいってことですね。
はい、なんじゃそりゃ。って感じで本記事は終わります。
誰かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!