みなさま、お疲れ様です。単相インバーターの記事、2回目です。
本日はバイポーラSPWM制御の単相インバーターのプラント伝達関数を導出してみようと思います。
- ΔIL/ΔDutyの伝達関数がわからない。
- ΔVac/ΔILの伝達関数がわからない。
と悩みを持たれている方の参考になれば幸いです。
【結論】ΔIL/ΔD ΔVac/ΔILの伝達関数
電流と電圧の伝達関数は以下の通りです。
$$\small{
G_{di}(s)=\frac{ΔIL(s)}{ΔD(s)}=\frac{2V_{dc}}{sL}\\
G_{iv}(s)=\frac{ΔVac}{ΔIL}=\frac{1}{sC}
}$$
L:リアクトルのインダクタンス値[H]、C:出力コンデンサ[F]、D:Duty[%]、IL:リアクトル電流、Vac:交流出力電圧
なぜこうなるのか?を以下で解説していきます。
ΔIL/ΔDの導出
それぞれの動作モードでの回路で式を立てます。
Q1とQ4がONのとき
まずはQ1とQ4がONのとき、回路を略して描くと以下のようになります。
インダクタの式を書くと
$$\small{
v_L=Li’_L(t)
}$$
ですね。で、VLはこのとき(Vdc-Vac)です。
$$\small{
(V_{dc}-V_{ac})=Li’_L(t)
}$$
i’L=の形にします。
$$\small{
i’_L(t)=\frac{V_{dc}-V_{ac}}{L}
}$$
これをラプラス変換します。微分はsをつければいいので
$$\small{
sI_L[s]=\frac{V_{dc}-V_{ac}}{L}\\
I_L[s]=\frac{V_{dc}-V_{ac}}{sL}
}$$
これがQ1,4がONのときです。
Q2とQ3がONのとき
次にQ2,3がONのときを考えます。回路を略して描くと以下のようになります。
Vdcが逆向きに印可されている状態です。
同様にインダクタの式を書いていきます。
$$\small{
v_L=Li’_L(t)
}$$
VLはこのとき(-Vdc-Vac)です。Vdcが逆向きに印可されてますからね。
$$\small{
(-V_{dc}-V_{ac})=Li’_L(t)
}$$
i’L=の形にします。
$$\small{
i’_L(t)=\frac{-V_{dc}-V_{ac}}{L}
}$$
これをラプラス変換します。微分はsをつければいいので
$$\small{
sI_L[s]=\frac{-V_{dc}-V_{ac}}{L}\\
I_L[s]=\frac{-V_{dc}-V_{ac}}{sL}
}$$
これがQ2,3がONのときです。
Dutyで平均化する
さきほど解いた式を以下にまとめて書きます。
$$\small{
I_L[s]=\frac{V_{dc}-V_{ac}}{sL}\\
I_L[s]=\frac{-V_{dc}-V_{ac}}{sL}
}$$
Q1,4のON DutyをD、Q2,3のON Dutyを1-Dとして、平均化します。
$$\small{
I_L[s]=\frac{V_{dc}-V_{ac}}{sL}D+\frac{-V_{dc}-V_{ac}}{sL}(1-D)
}$$
ごりごり解いて行きます。
$$\small{
I_L[s]=\frac{V_{dc}D-V_{ac}D-V_{dc}-V_{ac}+V_{dc}D+V_{ac}D}{sL}\\
I_L[s]=\frac{2V_{dc}D-V_{dc}-V_{ac}}{sL}
}$$
今回はDutyに対する伝達関数を知りたいので、Dがかかってる項以外は無視します。
$$\small{
I_L[s]=\frac{2V_{dc}D}{sL}
}$$
あとはDを移動させて終わりです。
$$\small{
\frac{I_L[s]}{D[s]}=\frac{2V_{dc}}{sL}
}$$
ΔVac/ΔILの導出
こっちは簡単に出てきます。
回路図を見ると
$$\small{
V_{ac}=v_{c}
}$$
ですね。つまり、コンデンサの式Q=CVで決まります。
$$\small{
V_{ac}=\frac{1}{C}\int i_L(t)dt
}$$
ラプラス変換します。積分は1/sを付けたらいいので
$$\small{
V_{ac}=\frac{1}{sC}I_L[s]
}$$
あとはILを移動させたら終わりです。
$$\small{
\frac{V_{ac}[s]}{I_L[s]}=\frac{1}{sC}
}$$
はい、こんな感じで伝達関数が導出できました。
この伝達関数をもとに制御設計をしたらいいって感じですね。
本記事はこれで終わります。誰かの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!!!