【電源回路】Hブリッジ型多機能DCDCの動作原理

みなさま、お疲れ様です。

本記事ではHブリッジ型多機能DCDCの動作原理について解説します。

Hブリッジ型多機能DCDCの動きがわからない!!

とお悩みの方の参考になれば幸いです。

Hブリッジ型多機能DCDCの回路図は以下の通りです。

Hブリッジ型多機能DCDC

これで降圧、昇圧、昇降圧を行うことができます。便利ですね。双方向動作できますが、今回はV1⇒V2の方向について解説します。

先に結論を言ってしまえば、以下の計算式で動作します。

モード入出力電圧関係式
降圧モード$$\small{
V_2=D_1V_1
}$$
昇降圧モード$$\small{
V_2=\frac{D_1}{D_2}V_1
}$$
昇圧モード$$\small{
V_2=\frac{1}{1-D_2}V_1
}$$

※D1はQ1のON Duty幅。D2はQ4のON Duty幅。

それぞれのモードの動作について解説していきます。

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降圧モード

降圧モードの動作モードは以下の2種類です。

モードQ1Q2Q3Q4
1ONOFFONOFF
2OFFONONOFF

降圧モードではQ3は常にON、Q4は常にOFFで動作します。

動作モードと電流経路

モード1:Q1がON、Q2がOFF

電流経路は以下の通りです。

降圧時モード1の電流経路

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_{L1}=\frac{V_1-V_2}{L}T_1
}$$

非絶縁降圧DCDCのH-sideがONしたときと同じですね。

モード2:Q1がOFF、Q2がON

電流経路は以下の通りです。

降圧時モード2の電流経路

リアクトルの電流を流し続けようとする作用により、Q2から電流が流れます。

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_{L2}=\frac{-V_2}{L}T_2
}$$

非絶縁降圧DCDCのL-sideがONしたときと同じですね。

入出力関係式

入力電圧と出力電圧の関係式を導出します。

「一周期のリアクトル電流を足し合わせると0になる。」のでそこから式を立てて解いて行きます。

$$\small{
ΔI_{L1}+ΔI_{L2}=0\\
\frac{V_1-V_2}{L}T_1+\frac{-V_2}{L}T_2=0
}$$

Q1がONしている割合をD1、Q2がONしている割合を1-D1として、一周期をTpwmとします。

すると、T1=D1*Tpwm、T2=(1-D1)*Tpwmと表現できます。

それを代入します。

$$\small{
\frac{V_1-V_2}{L}D_1T_{PWM}+\frac{-V_2}{L}(1-D_1)T_{PWM}=0
}$$

LとTpwmを消します。

$$\small{
(V_1-V_2)D_1-V_2(1-D_1)=0
}$$

上の式を整理すると以下の通りです。

$$\small{
V_2=D_1V_1
}$$

お馴染みの降圧DCDCの式が出てきました。これが降圧モードの入出力電圧関係式となります。

昇圧モード

昇圧モードの動作モードは以下の2種類です。

モードQ1Q2Q3Q4
1ONOFFOFFON
2ONOFFONOFF

昇圧モードではQ1は常にON、Q2は常にOFFで動作します。

動作モードと電流経路

モード1:Q3がOFF、Q4がON

電流経路は以下の通りです。

昇圧時モード1の電流経路

昇圧DCDCのチャージのときの動作ですね。

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_{L1}=\frac{V_1}{L}T_1
}$$

モード2:Q3がON、Q4がOFF

電流経路は以下の通りです。

昇圧時モード2の電流経路

リアクトルの電流を流し続けようとする作用により、Q3へ電流が流れます。

昇圧DCDCのディスチャージのときの動作ですね。

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_{L2}=\frac{V_1-V_2}{L}T_2
}$$

入出力関係式

降圧と同様に「一周期のリアクトル電流を足し合わせると0になる。」のでそこから式を立てて解いて行きます。

$$\small{
ΔI_{L1}+ΔI_{L2}=0\\
\frac{V_1}{L}T_1+\frac{V_1-V_2}{L}T_2=0
}$$

Q4がONしている割合をD2、Q3がONしている割合を1-D2として、一周期をTpwmとします。

すると、T1=D2*Tpwm、T2=(1-D2)*Tpwmと表現できます。

それを代入します。

$$\small{
\frac{V_1}{L}D_2T_{PWM}+\frac{V_1-V_2}{L}(1-D_2)T_{PWM}=0
}$$

LとTpwmを消します。

$$\small{
V_1D_2+(V_1-V_2)(1-D_2)=0
}$$

上の式を整理すると以下の通りです。

$$\small{
V_2=\frac{1}{1-D_2}V_1
}$$

お馴染みの昇圧DCDCの式が出てきました。これが昇圧モードの入出力電圧関係式となります。

昇降圧モード

昇降圧モードではQ1~Q4のスイッチがON/OFFします。

モードQ1Q2Q3Q4
1ONOFFONOFF
2-1OFFONONOFF
2-2ONOFFOFFON
3OFFONOFFON

Q1のONタイミングとQ4のONタイミングを同期していた場合、

モード1⇒モード2-1⇒モード3
モード1⇒モード2-2⇒モード3

のどちらかで動作します。いずれにしても入出力電圧関係式は同じになります。

動作モードと電流経路

モード1:Q1,Q3がON

電流経路は以下の通りです。

昇降圧時のモード1の電流経路

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_{L1}=\frac{V_1-V_2}{L}T_1
}$$

モード2-1:Q2,Q3がON

電流経路は以下の通りです。

昇降圧時のモード2-1の電流経路

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_{L2-1}=\frac{-V_2}{L}T_{2-1}
}$$

モード2-2:Q1,Q4がON

電流経路は以下の通りです。

昇降圧時のモード2-2の電流経路

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_{L2-2}=\frac{V_1}{L}T_{2-2}
}$$

モード3:Q2,Q4がON

電流経路は以下の通りです。

昇降圧時のモード3の電流経路

リアクトル電流は以下の通りです。

$$\small{
ΔI_{L3}=\frac{0V}{L}T_{3}=0
}$$

このモードだけ増減は0Aとなります。

入出力関係式

まずは、”モード1⇒モード2-1⇒モード3″となる場合を考えます。

今までと同様に一周期のリアクトル電流は0になるので、

$$\small{
ΔI_{L1}+ΔI_{L2-1}+ΔI_{L3}=0\\
\frac{V_1-V_2}{L}T_1+\frac{-V_2}{L}T_{2-1}=0
}$$

モード3の電流は0なので、省略です。

T1はD1*Tpwmと表現できます。
T2_1は(D2-D1)Tpwmと表現できます。

それらを代入して、LとTpwmを消します。

$$\small{
(V_1-V_2)D_1-V_2(D_2-D_1)=0
}$$

これを整理すると

$$\small{
V_2=\frac{D_1}{D_2}V_1
}$$

となります。

つづいて”モード1⇒モード2-2⇒モード3″となる場合を考えます。

今までと同様に一周期のリアクトル電流は0になるので、

$$\small{
ΔI_{L1}+ΔI_{L2-2}+ΔI_{L3}=0\\
\frac{V_1-V_2}{L}T_1+\frac{V_1}{L}T_{2-2}=0
}$$

モード3の電流は0なので、省略です。

T1はD2*Tpwmと表現できます。
T2_2は(D1-D2)Tpwmと表現できます。

それらを代入して、LとTpwmを消します。

$$\small{
(V_1-V_2)D_2+V_1(D_1-D_2)=0
}$$

これを整理すると

$$\small{
V_2=\frac{D_1}{D_2}V_1
}$$

となります。

結局同じ式が出てきました。

PWM波形の実現方法

PWM波形は以下のように作ります。

このようにすることで、VC電圧の位置によって降圧/昇降圧/昇圧を切り替えることが出来ます。

1周期の動作波形イメージ図は以下の通りです。

降圧モードの動作波形イメージ図
昇圧モードの動作波形イメージ図
昇降圧モードの動作波形イメージ図

シミュレーションでの動作確認

「はいはい、そういう動作原理だと君が思ってるってことはわかったよ。でもそれだけだと”僕を信じて下さい。”としか言ってないよね。証拠を提示してくださいよ。証拠を。」

という方に向けて、PSIMでシミュレーションをした結果を示します。PSIMの導入方法はこちらの記事で解説しておりますので、良かったら読んでみて下さい。

まず回路は以下の通りです。

Hブリッジ回路のPSIM回路図

シミュレーション結果は以下の通りです。

降圧モード時の動作 D1=50%のため、出力電圧(V2)=0.5*入力電圧(V1)の6Vが出力されている。
昇圧モード時の動作 D2=50%のため、出力電圧(V2)=入力電圧(V1)/0.5の24Vが出力されている。
昇降圧モード時の動作 D1=D2のため、出力電圧(V2)=入力電圧(V1)の12Vが出力されている。

想定通りに動作しており、問題ないです。

はい、本記事は以上となります。誰かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!