みなさま、お疲れ様です。
先日、こちらの平地研究室技術メモを読んで「え?マジ天才じゃん。。。」と思ったので、それを共有すべく、わかりやすく解説してみようと思います。
降圧スイッチングレギュレータをソフトスイッチングさせたい!
と思われている方の参考になれば幸いです。
結論:リアクトル電流を逆流させて部分共振定番方式でソフトスイッチングさせる!!
結論は
リアクトルのLを小さくして、リアクトル電流が逆流するようにする!
です。
なんのこっちゃ?って感じですが、リアクトルの定数を弄れば、追加部品なしにソフトスイッチングが実現できます。
「いや、マジ天才じゃん」って思いましたが、技術メモの冒頭に「初心者向け」って書いてあります。
ちょっとへこみますね。
内容について以下で詳しく説明してみます。
そもそもソフトスイッチングとは?
念のため、「そもそもソフトスイッチングってなんだよ!」という方に向けて説明します。
ソフトスイッチングには電気学会が定めた定義があります。
スイッチング過程における半導体バルブデバイスの電圧-電流平面上の軌跡が最大電圧点、最
大電流点および原点を結ぶ三角形の領域内で動くスイッチング動作
http://hirachi.cocolog-nifty.com/kh/files/20150925-1.pdfより引用
とは言っても、意味不だと思います。図で描くと以下です。
これもちょっと分かりづらいですね。一例を出します。例えば、以下のようなスイッチング波形があったとします。
スイッチがOFFするとスイッチの両端電圧は0Vから徐々に上がっていき、スイッチに流れる電流はある値から徐々に下がっていきます。
この軌道を先ほどのソフトスイッチング領域にプロットしたらこうなります↓。
つまりスイッチング時の電圧、電流の起動が図1の斜め線の左下の領域に入っていたらソフトスイッチングです。
なのでソフトスイッチングはゼロイチではなく。ソフトスイッチングにも度合いがあるってことです。
割と損失多めのソフトスイッチングもあれば、損失めちゃ少ないソフトスイッチングもあるって感じですね。
はい、ソフトスイッチングの定義は以上です。
そもそも部分共振によるソフトスイッチングとは?
「おいおいおいwそもそも部分共振ソフトスイッチングって何のこと言ってるの?」という方に向けて説明します。
例えばLLCコンバータがこのタイプのソフトスイッチングです。どういう原理で部分共振ソフトスイッチングしているかはこちらの記事で解説しておりますので、良かったら読んでみて下さい。
ざっくりQ2がオフして、Q1がオンするときのことを解説します。
まず、Q2ターンオフ直前、電流は上から下へ流れています↓。
ここでQ2がターンオフします。すると、行き場を失った電流はCds1,2へ流れ込みます↓。
このときQ2の両端電圧はコンデンサが充電されて、徐々に上昇していきます。
つまりQ1の両端電圧が小さくなっているってことです。これが上昇しきって、0VのときにQ1をターンオンしたらどうでしょうか?
はい、ZVSのソフトスイッチング達成です。
こんな感じにリアクトル電流がジャバジャバっとCAPに充電されて、電圧が上昇することを利用して、ZVSするのが部分共振によるソフトスイッチングです。
そもそも降圧スイッチンレギュレータはなぜ部分共振ソフトスイッチングできないのか
それはリアクトル電流が一方向にしか流れないからです。
そのためQ2がターンオンするときはZVSが成立しますが、Q1ターンオン時にはZVSが成立しません。
よくわからないと思うので、Q2がターンオフする寸前から順番に考えます。
Q2ターンオフ寸前にリアクトル電流は左からの右へ流れ続けます。
L-sideスイッチ(Q2)がターンオフした後、リアクトルは電流を流し続けようとして、並列のボディダイオードが導通します。
そうすると、Q1,Q2の中間電位は一向にVinへ上昇していきません。そして、Q1のVdsにVin電圧がかかったまま、Q1がターンオンします。
つまり、リアクトル電流が出力側へ流れるから、Q1,2がOFFのときに中間電位が0Vに固定される。そのせいでQ1がハードスイッチングになる。ということです。
だったら、逆側に電流を流してやりゃいいじゃん!っていうのが根本的な発想ですね。
リアクトル電流を逆流させて部分共振ソフトスイッチングさせる
まずリアクトルを小さくして、コイルリップル電流を大きくします。
こうすることでQ2がターンオフするときにリアクトル電流は右から左へ流れていることになります。
順番に見ていきます。
同様にQ2がターンオフするときを考えます。先ほどとは逆方向にリアクトル電流が流れています。
L-sideスイッチ(Q2)がターンオフした後、リアクトルは電流を流し続けようとして、寄生容量に流れ込みます。充電されて、中間電位は上昇します。
中間電位が上昇しきっても電流は引き続き左側へ流れ続けようとします。H-sideスイッチQ1のダイオードが導通して流れます。
ダイオードが導通しているので、Q1のドレイン-ソース間電圧はほぼ0Vです。ここでQ1がターンオンすることで、ZVSのソフトスイッチングを達成します。
このように、リアクトル電流のリップルを大きくすることで、素子の追加無しに降圧チョッパー回路をソフトスイッチングさせることが可能となります。
欠点はリップル電流が大きくなりますので、出力電圧のリップルが増加します。抑えるために出力コンデンサが大きくなったり、、、とかが考えられますね。
しかし、簡単に降圧スイッチングレギュレータをソフトスイッチングさせることが出来るこの手法はすごいなぁと思いました。
はい、以上となります。
何かの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!